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奥歯を噛みしめる 詩がうまれるとき キム・ソヨン 姜信子監訳 奥歯翻訳委員会訳
¥2,420
心の傷もわかりあえなさも、 すべてを詩にしたとき、母を愛せるようになった——。 痛みの声を聴く詩人が、母、父、心の傷、そして回復までの日々を語る。 奥歯を噛みしめて耐えること、奥歯を噛みしめて愛すること。 何もできなかったあのころ。それは、詩のうまれゆく時間であった。 生きることそれ自体が、詩になる。 それは特別なことではなく、 あなたの人生もまた詩なのだ。 寒さに震える心をそっと包み込む、かぎりなくあたたかな30篇のエッセイ。 「日本の読者へ」と、三角みづ紀(詩人)による応答エッセイを付す。 著者について キム・ソヨン 詩人。詩集に『数学者の朝』(クオン、2023)、『極まる』、『光たちの疲れが夜を引き寄せる』、『涙という骨』『 iへ』ほか。エッセイ集に『詩人キム・ソヨン 一文字の辞典』(クオン、2021、第8回日本翻訳大賞)、『心の辞典』ほか。露雀洪思容文学賞、現代文学賞、李陸史詩文学賞、現代詩作品賞などを受賞。 訳者について 姜信子(きょう・のぶこ/カン・シンジャ) 作家。横浜生まれ。主な著書に『語りと祈り』、『はじまれ、ふたたび いのちの歌をめぐる旅』、『現代説経集』、『声 千年先に届くほどに』、『棄郷ノート』、山内明美との共著『忘却の野に春を想う』ほか多数。編書に、谺雄二『死ぬふりだけでやめとけや 谺雄二詩文集』、『金石範評論集Ⅰ 文学・言語論』、『金石範評論集Ⅱ 思想・歴史論』。訳書に、『詩人キム・ソヨン 一文字の辞典』(クオン、第8回日本翻訳大賞)、李清俊『あなたたちの天国』、ホ・ヨンソン『海女たち』(共訳)ほか。 奥歯翻訳委員会 李和静、佐藤里愛、申樹浩、田畑智子、永妻由香里、バーチ美和、ほとりさよ、松原佳澄 『詩人キム・ソヨン 一文字の辞典』(クオン)で第8回日本翻訳大賞を受賞。 目次 日本の読者へ はじめに 1 母を終えた母 2 口があるということ 慶州市千軍洞の敵産家屋 振り返らせる 歩いてそこへ行く 少し違うこと 懐中電灯を照らしながら歩いた夜 場所愛 topophilia 間隙の卑しさの中で 祈りをしばしやめること 私を煩わせる「無」 パンと彼女 失敗がきらめく 「積ん読」と「積ん読の対義語」 無能の人 あらゆる者の視点 3 儚い喜び 4 「途方もなさ」について じたばたのつぎのステップ 音なき岩 皮膚を剥がす 奥歯を噛みしめる わたしが詩人なら 楯突く時間 得る 二〇三〇年一月一日 火曜日 晴れ 明日は何をしようか 木の箸と木彫りの人形 平和であれ 5 二箱の手紙 忘れないために、手放すために 三角みづ紀 監訳者あとがき たとえ奥歯はすりへろうとも
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ラクダに乗って シン・ギョンニム著 吉川凪訳
¥2,420
「新しい韓国の文学」シリーズ第4作としてお届けするのは、韓国の国民的詩人といわれるシン・ギョンニムの詩選集『ラクダに乗って』。 ラクダに乗って行こう あの世へは/ 星と月と太陽と/砂しか見たことのないラクダに乗って。 ―「ラクダ」より 40年に及ぶ全詩業から選りすぐりの69篇を収録した、画期的な一冊となっています。 韓国民衆の暮らしを見つめ、それをすぐれた詩作品へと昇華させた出世作『農舞』の他、厳選した詩やエッセイ、訳者による詩人解説を収録。 韓国最大の詩人の詩業を一望できる内容となっています。
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長崎パパ ク・ヒョソ著 尹英淑訳
¥2,420
「新しい韓国文学シリーズ」第3作としてお届けするのは、現代韓国を代表する作家・具孝書(ク・ヒョソ)の、長崎を舞台にした絆と新しい共同体の物語「長崎パパ」。 「せっかく人間として生まれてきたのに、日本人とか朝鮮人とかだけで終わるってのは寂しいじゃない。それは、生まれながらに決まってしまうスタートラインにすぎないだけで、辿り着くべきゴールではないでしょう?」 それぞれが背負った悩みや痛みを分かち合い、支え合いながら、彼らなりの答えを求め続ける「ネクストドア」の人たち。そこに生まれる絆と新しい共同体の物語。現代韓国を代表する作家・具孝書(ク・ヒョソ)の傑作長編小説。
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楽器たちの図書館 キム・ジュンヒョク著 波田野節子訳
¥2,420
「新しい韓国文学シリーズ」第2作としてお届けするのは、若手作家キム・ジュンヒョクの短編集、言葉と音があふれだす8つの物語「楽器たちの図書館」。 「この短編集は、僕からみなさんへ贈る〈録音テープ〉です」 音の世界に魅せられて「楽器図書館プロジェクト」をはじめる表題作「楽器たちの図書館」をはじめ、ピアノ、CD、ラップ、DJなどさまざまな音が聴こえてくる短編小説8編を収録した、韓国の人気新鋭作家、キム・ジュンヒョクの短編集。 奇抜な想像力とユーモアあふれる作品で、韓国文学界でも独自の存在感を放つ作家、キム・ジュンヒョクの、これまでの韓国文学とはひと味もふた味もちがう、新しい感覚のポップな小説世界。
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菜食主義者 ハン・ガン著 きむ・ふな訳 CUON
¥2,420
「新しい韓国文学シリーズ」第1作としてお届けするのは、韓国で最も権威ある文学賞といわれている李箱(イ・サン)文学賞を受賞した女性作家、ハン・ガンの『菜食主義者』。韓国国内では、「これまでハン・ガンが一貫して描いてきた欲望、死、存在論などの問題が、この作品に凝縮され、見事に開花した」と高い評価を得た、ハン・ガンの代表作です。 ごく平凡な女だったはずの妻・ヨンヘが、ある日突然、肉食を拒否し、日に日にやせ細っていく姿を見つめる夫(「菜食主義者」)、妻の妹・ヨンヘを芸術的・性的対象として狂おしいほど求め、あるイメージの虜となってゆく姉の夫(「蒙古斑」)、変わり果てた妹、家を去った夫、幼い息子……脆くも崩れ始めた日常の中で、もがきながら進もうとする姉・インへ(「木の花火」)― 3人の目を通して語られる連作小説集。
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仕事の喜びと哀しみ 著者チャン・リュジン 訳者牧野美加 CUON
¥1,980
表題作「仕事の喜びと哀しみ」がチャンビ新人小説賞を受賞し、ネットに公開されるとたちまち読者の共感をよび40万ビューを記録。 2020年11月には韓国KBSでドラマ化もされています。 本書にはこのほか、ミレニアル世代の著者が同世代の人々を主人公に描いた、8篇を収録。
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小説版 韓国・フェミニズム・日本 河出書房新社
¥1,980
創刊以来86年ぶりの3刷となった「文藝」の特集「韓国・フェミニズム・日本」から日韓の書き手たちによる短編小説を集め、チョ・ナムジュの初邦訳「離婚の妖精」、松田青子の書き下ろしを加えた決定版。 創刊以来86年ぶりの3刷となった「文藝」2019年秋季号の特集単行本化第2弾。 ベストセラー『82年生まれ、キム・ジヨン』のチョ・ナムジュが贈る、ママ友同士の愛と連帯を描いた「離婚の妖精」のほか、松田青子待望の短編作、本邦初紹介となる韓国の覆面SF作家デュナの傑作短編を加えてパワーアップ! 日韓最前線、12人の作家たちによる夢の競演。 チョ・ナムジュ 著 松田青子 著 デュナ 著 西 加奈子 著 ハン・ガン 著 イ・ラン 著 小山田 浩子 著 高山 羽根子 著 深緑 野分 著 星野 智幸 著
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韓国映画100選 CUON
¥3,850
100年間の名画に映し出される日本統治時代、民主化、南北分断、フェミニズム。 現存する最古の作品から『パラサイト 半地下の家族』まで、 韓国映画の歴史を辿る決定書! 韓国映画の代表作を取り上げた本書は、韓国随一の映画専門家67名による評論集であり、自国を見つめる視点から切り込んだ深い洞察が記されています。 原書に掲載された101作品に加えて、日本語版では原書刊行後に製作された5作品(ポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』ほか)を新たに加えました。 映画はフィクションであると同時に、時代の記録でもあります。 例えば、『誤発弾』や『非武装地帯』『キルソドム』などに描かれる朝鮮戦争が庶民の生活に落とした影。ノンポリの大学生の恋愛を入口にした『馬鹿たちの行進』の背景に隠された軍事政権による検閲とのせめぎ合い。また、1970年代の『冬の女』、1980年代の『シバジ』、そして1990年代の『結婚物語』などには、女性の解放の歴史が映し出されています。そう、歴史を彩る映画の数々は、日韓関係や南北問題、民主化、フェミニズムなど、現代の韓国を紐解き、未来を考えるための貴重な資料でもあるのです。 その時代に作られた映画は、時を経てもなおリアルな迫力と驚きを秘めています。 「韓国映画100選」をガイドブックとして、古の韓国にタイムスリップするのはいかがでしょうか。 編者:韓国映像資料院(KOFA) 貴重な文化遺産である映像資料を国家が収集・復元する韓国で唯一の機構として、1974年に設立された。 国の映像文化遺産が最適な環境で保存・復元され、後代に永遠に伝えるための基盤の造成に全力を注いでいる。 多くの人々が映像文化を積極的に享受できるように映画館「シネマテーク KOFA」と映画博物館、映像図書館を運営。 デジタル映像資料の収集、デジタル技術を利用した復元、アナログ資料のデジタル化など、デジタルアーカイブ化作業も進めている。映画史研究および出版を通じて韓国映画研究と普及を推進する拠点となるべく、努力を続けている。 ◆韓国映像資料院「韓国映画100選」 https://eng.koreafilm.or.kr/kmdb/trivia/2014 訳者:桑畑優香 早稲田大学第一文学部卒業。延世大学語学堂・ソウル大学政治学科で学ぶ。 「ニュースステーション」ディレクターを経てフリーに。 ドラマ・映画のレビューを中心に『韓国語学習ジャーナルhana』『韓流旋風』『現代ビジネス』『デイリー新潮』『AERA』『Yahoo! ニュース 個人』などに寄稿・翻訳。 訳書に『韓国映画俳優辞典』(ダイヤモンド社・共訳)『韓国崩壊』(ランダムハウス講談社・共訳)、『韓国・ソルビママ式 子どもを英語好きにする秘密のメソッド』(小学館)、『今、何かを表そうとしている 10 人の日本と韓国の若手対談』(クオン)、『花ばぁば』(ころから)など。
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大人でなく30歳です 著者:ニナキム / 訳者:バーチ美和 サンマーク出版
¥1,430
「もっと完璧な大人になると思ってた」 韓国で共感相次ぐ、不完璧・肯定本! 「もっと完璧な大人になると思ってた」 「このままで大丈夫?」 今の自分に不安な人に贈る、 心が前向きになる等身大の 大人のリアル。 自分なりに、前向きに、 時々後ろを向いて生きていこう。 ☆「私だけじゃなかった!」「勇気をもらった!」 共感レビュー、続出中! ☆毎日にある「でこぼこ」をとらえた言葉とイラストに、 みんな完璧じゃない、不完璧でOKと 心が軽くなる人が相次いでいます。
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太れば世界が終わると思った キム・アンジェラ 著 高原美絵子 訳 西野明奈 訳 扶桑社
¥1,650
<鏡のなかのわたしとの戦争。終わりなき戦争> 17年におよぶ摂食障害と向き合い 自分の心を見つめ直した 韓国人女性の記録 美しい体って、誰が決めるの? 第一章 過食症を患う 虫になる/わたしはもともと、あばらちゃんだったんだから/ダイエットをやめられなかった/はじめての嘔吐/食欲という怪物/悪循環のループ/過食型拒食症/精神科での治療開始 第二章 摂食障害とともにやってくるもの 内向的であり、外省的/生まれつきの敏感さ/統制される生活/自己管理強迫/秩序への執着/痩せた体、もっと痩せた体/うつ病の洞窟のなかで/潔癖症のせいで/もう少しましな自分になりたかっただけ 第三章 美しい体って誰が決めるの 鏡のなかのわたし、写真のなかのわたし/オルセン姉妹とニコール・リッチー/映画やドラマのなかの摂食障害/摂食障害をラッピングするメディア/ヴィーナスとコルセット/「めちゃ痩せ」しなきゃ 第四章 わたしのなかで育つ恨みと痛み 母の最善/父の権威/わたしをダメにしてしまう/そんなに痛くない指/外見コンプレックスに陥る/生きてみたらわかってくること/家族になるための距離 第五章 両極端を経験して、自分なりのバランスを見つける 精神科治療の中断/わたしの話に耳を傾けてくれる人/シドニーに発つ/愚かな関係/失敗の記録/諦めて自由になる/しっかりとしていく生活/悪循環ではないが好循環でもない/新しい世界 【本書より】 もう一度鏡を見た。幼いころに映画で見た鏡のお化けはもういなかったけれど、代わりにほかのものがあった。わたしが決めた美の基準だ。それはわたしが鏡を見るたびにわたしの横に並んで立ち、わたしのことをせせら笑った。「でぶ」「その尻はなんなの」「二の腕の肉はどうするわけ?」「ぶさいく」基準はその時ごとに変わった。(中略)戦争がはじまった。鏡のなかのわたしとの戦争。終わりなき戦争。
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差別はたいてい悪意のない人がする 見えない排除に気づくための10章 キムジヘ 著 尹怡景 訳 大月書店
¥1,760
あらゆる差別はマジョリティには「見えない」。日常の中にありふれた 排除の芽に気づき、真の多様性と平等を考える思索エッセイ。 目次 プロローグ あなたには差別が見えますか? I 善良な差別主義者の誕生 1章 立ち位置が変われば風景も変わる 2章 私たちが立つ場所はひとつではない 3章 鳥には鳥かごが見えない II 差別はどうやって不可視化されるのか 4章 冗談を笑って済ませるべきではない理由 5章 差別に公正はあるのか? 6章 排除される人々 7章 「私の視界に入らないでほしい」 III 私たちは差別にどう向きあうか 8章 平等は変化への不安の先にある 9章 みんなのための平等 10章 差別禁止法について エピローグ わたしたち 訳者あとがき 解説 韓国における差別禁止の制度化とそのダイナミズム(金美珍)
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女の子だから、男の子だからをなくす本 ユン・ウンジュ著 イ・へジョン絵 ソ・ハンソル監修 すんみ訳 エトセトラブックス
¥2,020
性別の枠組みから自由になって これから必要なジェンダーの知識を得る 子どもと大人で読む絵本 性別による固定観念を吹き飛ばす、韓国発のジェンダー絵本! 「女の子はリーダーになれない」 「女の子は気を遣いましょう」「男の子は運動しなきゃ」「男の子は泣いてはいけない」などなど…子どもたちを縛る「ことば」がなぜいけないのか。具体的に解説し、そこから自由になるためにはどうしたらいいのか、カラフルで楽しいイラストとともに導きます。 韓国では小学生向けに刊行されロングセラーとなった一冊ですが(*日本語版は小学3年生〜ルビ対応)、未来のために大人も読むべき絵本です。ひとりひとりがみんな違うという前提を共有し、自分が目指す「素敵な人」になるために。 定価 2000円+税 判型 B5判・上製 頁数 60ページ(オールカラー) 装幀・本文デザイン 潟見陽(loneliness books) 発売 2021年3月28日 刷り 3刷 ISBN 978-4-909910-11-0
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韓国文学を旅する60章 波田野節子 編著 斎藤真理子 編著 きむ ふな 編著 明石書店
¥2,020
いまもっとも注目されている韓国文学。さまざまな土地にゆかりのある、古典から現代まで総勢60人の作家/作品を通して、読者を旅に誘う。韓国を愛するすべての人に向けた、豪華執筆陣による珠玉のエッセイ集。エリア・スタディーズ〈文学編〉
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中央駅 キム・へジン著 生田美保訳 彩流社
¥1,650
路上生活者となった若い男と病気持ちの女…ホームレスがたむろする中央駅を舞台に、二人の運命は交錯する。『娘について』(亜紀書房)を著したキム・ヘジンによる、どん底に堕とされた男女の哀切な愛を描き出す長編小説、初訳 【出版社より】
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菜食主義者 ハン・ガン著 きむ ふな訳 CUON
¥2,420
「新しい韓国文学シリーズ」第1作としてお届けするのは、韓国で最も権威ある文学賞といわれている李箱(イ・サン)文学賞を受賞した女性作家、ハン・ガンの『菜食主義者』。韓国国内では、「これまでハン・ガンが一貫して描いてきた欲望、死、存在論などの問題が、この作品に凝縮され、見事に開花した」と高い評価を得た、ハン・ガンの代表作です。 【出版社より】
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ディディの傘 ファン・ジョンウン著 斎藤真理子訳 亜紀書房
¥1,760
死と破壊、そして革命。 人々は今日をどのように記憶するのか。 「セウォル号沈没事故」「キャンドル革命」という韓国で起きた社会的激変を背景に、人が人として生きることの意味を問う最新作。 多くの人命を奪った「セウォル号沈没事故」、現職大統領を罷免に追い込んだ「キャンドル革命」という社会的激変を背景にした連作小説。 孤立し、閉塞感が強まる日常の中で、人はいかに連帯し、突破していくのか? 行く先に真の〈革命〉はもたらされるのか? 私たちが望む未来とは? ——人は誰もが唯一無二の存在という事実をあらためて突きつけていく。 デビューから15年。たくさんの読者を獲得すると同時に、文壇の確固たる支持を受け、名実ともに韓国を代表する作家となったファン・ジョンウンが放つ、衝撃の最新作。「d」と「何も言う必要がない」の2作品を収録。 2019年〈小説家50人が選ぶ“今年の小説”〉第1位に選出。 5・18文学賞、第34回萬海文学賞受賞作。 【目次】 ・d ・何も言う必要がない ・あとがき ・日本の読者のみなさんへ ・訳者解説 【書評・メディア情報】 週刊金曜日(10月30日号)/書評(長瀬海氏・ライター、書評家) 西日本新聞(11月28日)/カリスマ書店員の激オシ本(橙書店・田尻久子氏) クロワッサン(12月25日号)/書評(瀧井朝世氏・ライター) 2021年 東京新聞(1月18日)/大波小波で紹介 中日新聞(1月18日)/大波小波で紹介 ミセス(2月号)/今月の本・(蜂飼耳氏・詩人) 著者紹介 ファン・ジョンウン 1976年生まれ。2005年、短編「マザー」でデビュー。08年、最初の短編集『七時三十二分 象列車』を発表すると、現実と幻想をつなぐ個性的な表現方法が多くの人の心を捉え、〈ファン・ジョンウン・シンドローム〉を巻き起こす。 10年、最初の長編小説『百の影』で韓国日報文学賞、12年、『パ氏の入門』で申東曄文学賞、14年、短編「誰が」で李孝石文学賞、15年、『続けてみます』で大山文学賞、17年、中編「笑う男」(本収録作「d」)で金裕貞文学賞など、数々の文学賞を受賞。本作では5・18文学賞と第34回萬海文学賞を受賞している。 邦訳された作品に『誰でもない』(斎藤真理子訳、晶文社)、『野蛮なアリスさん』(斎藤真理子訳、河出書房新社)がある。 斎藤 真理子(さいとう・まりこ) 1960年新潟生まれ。訳書にパク・ミンギュ『カステラ』(ヒョン・ジェフンとの共訳、クレイン)、チョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』(河出書房新社)、チョン・セラン『フィフティ・ピープル』(亜紀書房)、チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)、ハン・ガン『回復する人間』(白水社)、イ・ギホ『誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ』(亜紀書房)など。『カステラ』で第1回日本翻訳大賞受賞。 【出版社説明より】
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ショウコの微笑 チェ・ウニョン著 CUON
¥2,750
高校の文化交流で日本から韓国へやってきたショウコは、私の家に1週間滞在した。帰国後に送り続けられた彼女の手紙は、高校卒業間近にぷっつり途絶えてしまう。 約十年を経てショウコと再会した私は、彼女がつらい日々を過ごしていたと知る。 表題作のほか時代背景も舞台も異なる多彩な作品を収録。 いずれの作品の登場人物も哀しみ、苦しみを抱えながら他者と対話し、かかわることで、自らの人生に向き合おうとする。 時と場を越えて寄り添う7つの物語。 作者=チェ・ウニョン〔崔恩栄〕 198 4年、京畿道生まれ。高麗大学国文科卒。 2013年に「ショウコの微笑」で『作家世界』新人賞を受賞し、デビュー。 翌年には同作で第5回若い作家賞を受賞。 2016年に許筠文学作家賞、 2017年に「その夏」で第8回若い作家賞をそれぞれ受賞している。 「その夏」も収録した短編集第2作『私にとって無害な人』は、2018年に第5 1 回韓国日報文学賞を受賞した。 静かで端正な文体でつづられた作品は、長く濃い余韻をもって読者の心を動かすと支持されており、今後の作品に期待が高まる注目の若手作家の一人である。 監修 吉川凪 仁荷大学に留学、博士課程修了。文学博士。 著書『朝鮮最初のモダニスト鄭芝溶』、『京城のダダ、東京のダダ』、 訳書『申庚林詩選集 ラクダに乗って』、『都市は何によってできているのか』、 『アンダー、サンダー、テンダー』『完全版 土地』(1、3、4、6 巻)など。 キム・ヨンハ『殺人者の記憶法』で第四回日本翻訳大賞受賞。 翻訳 牧野美加 大阪生まれ。看護師として、海外ボランティアも含め医療に長く従事。 2008年より韓国在住。釜慶大学言語教育院で韓国語を学んだ後、新聞記事や広報誌の翻訳に携わる。 第1回「日本語で読みたい韓国の本翻訳コンクール」最優秀賞受賞。 横本麻矢 東京生まれ。大学にて外国語(英語・フランス語・韓国語)を専攻。 報道機関での記事翻訳、一般企業でのインハウス翻訳者を経て、フリーランスとして産業翻訳に従事。 第1回「日本語で読みたい韓国の本翻訳コンクール」優秀賞受賞。 小林由紀 北海道生まれ。法律関連の仕事に携わる傍ら、 韓国映画の魅力を知って韓国語を学び始め、現在は映像字幕翻訳の学習中。 第1回「日本語で読みたい韓国の本翻訳コンクール」優秀賞受賞。 【出版社より】 https://note.com/riemorning/n/nbe61a89b2a1a 【マール店主の感想】
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わたしに無害なひと チェ・ウニョン著 古川綾子訳 亜紀書房
¥1,760
【出版社の紹介より】 2018年〈小説家50人が選ぶ“今年の小説”〉に選出、 第51回韓国日報文学賞受賞作! 誰も傷つけたりしないと信じていた。 苦痛を与える人になりたくなかった。 ……だけど、あの頃の私は、まだ何も分かっていなかった。 あのとき言葉にできなかった想いがさまざまにあふれ出る。 もし時間を戻せるなら、あの瞬間に……。 第8回若い作家賞受賞作「あの夏」を含む、7作品を収録。 韓国文学の〈新しい魅力〉チェ・ウニョン、待望の最新短編集。 【目次】 ・日本の読者のみなさんへ ・あの夏 ・六〇一、六〇二 ・過ぎゆく夜 ・砂の家 ・告白 ・差しのべる手 ・アーチディにて ・あとがき ・訳者あとがき 【書評・メディア情報】 高知新聞(5月17日)/書評(江南亜美子氏・書評家) 福島民友(5月23日)/書評(江南亜美子氏・書評家) 南日本新聞(5月24日)/書評(江南亜美子氏・書評家) 中國新聞(5月24日)/書評(江南亜美子氏・書評家) 福井新聞(5月31日)/書評(江南亜美子氏・書評家) NHKラジオ第一「マイあさ!」(7月5日)/訳者・古川綾子さん出演 東洋経済日報(7月7日)/紹介 週刊読書人(7月10日)/書評(吉良佳奈江氏・翻訳家、韓国語講師) 朝日新聞(7月11日)/書評(温又柔氏・小説家) サイゾーウーマン(7月17日)/書評(保田夏子氏) 京都新聞(7月26日)/書評(江南亜美子氏・書評家) 図書新聞(8月1日号)/紹介(「本が好き!」コラボ企画) クロワッサン(8月25日号)/「文学から栄養 よりすぐり読書日記」(瀧井朝世氏・ライター) 東洋経済日報(9月4日)/書評(金珉廷氏・韓国語講師) 韓流ぴあ(11月号)/紹介(「空前の韓国ブームを知る」) 【マール店主の感想】 ふと、「あの本、読みたいな」と思う時がある。 「読みたい!」と思って買う時は、たいてい何冊もまとめ買いするので、そのまま読まずに本棚に入っている本がある。チェ・ウニョンさんの本もそのうちのひとつだった。 昨日ふと、「読みたいな」と思って手に取った。やわらかい緑色の本。そして、1番最初に書いてある「日本の読者のみなさんへ」を読んで、私は泣きそうになってしまった。 ここに書くにあたり、胸に響いた部分を引用しようかと思ったけれど、どこからどこまで引用すればいいかわからなくなった。まるごと読んでほしい。そんな気持ちになった。 この本には7つの短編が入っている。どれもある一時期、いつも一緒に同じ時を過ごしたり、他の人とは共有できない話をしていたり、人生に深く関わった人。けれど今は一緒にいない人との物語だ。 長く生きれば生きるほど、今はもう会えない人、「あの頃」が増えていく。あの時わたしはどうすればよかったんだろう。どうして連絡を断ってしまったのか。疎遠になった人たち。過去の美しい記憶の中に混ざるざらついた、自分だけはごまかせない感情。 チェ・ウニョンさんはそういったものをすくいとって、物語にしている。チェ・ウニョンさんの文体なのか、翻訳者の古川さんのなせる技なのか、翻訳本の違和感なく、文がさらさらと流れていくが、その余韻は重い。 いろいろな人の視点がそのままに描かれていて、そのうちの誰か1人にだけ感情移入することができない。自分の中にみんないる。時の流れや今にフォーカスすることでごまかしているけれど、あの時置いてきたものたちは今の自分の中に全部ある。それを改めて思い起こす本になった。
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【新刊】誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ イ・ギホ著 斎藤真理子訳 亜紀書房
¥1,870
必死で 情けなくて まぬけな 愛すべき「私たち」 ネット古書店でエゴサをしていたら、サイン入り自作が売りに出されていることに気づいた作家「イ・ギホ」。しかも他の作家の本より格安、酷評のコメント付きだった。 悶々として眠れぬ作家は、出品者に直接会おうとはるばるでかけるのだが……。(「チェ・ミジンはどこへ」) 夫殺害の嫌疑をかけられながら逮捕されなかった女が、十数年後、時効を3か月後に控えて自首した。一体なぜなのか。(「ずっと前に、キム・スッキは」) 「あるべき正しい姿」と「現実の自分」のはざまで揺れながら生きる「ふつうの人々」を、ユーモアと限りない愛情とともに描き出す。 ——韓国文学の旗手による傑作短編集 【出版社の内容紹介】 著者 イ・ギホ 著 斎藤 真理子 訳 価格 1,700円(税別) 発売日 2020年1月24日 判型 四六判 製本 並製 頁数 320頁 ISBN 978-4-7505-1628-8 Cコード C0097 おもしろかった。短編集なのだけれど、どの短編集もすべておもしろかった。読みやすい文体なので、スッと中に入れて読みすすむことができる。が、読み終わった後には、なんだかうすら寒くなる。やさしいようでいて、ひどく冷静な、寄り添うようでいて、どこからも離れている、そんな感じを受ける。 最初の短編もそうだが、作家が主人公のものがたりがいくつかあり、中には同じ名前だったり、あとがきとされている短編はほぼ実話ということで、小説なのか実際にあった話なのか、その境界線がわざとぼかしてある。 訳者の斎藤さんが解説しているように、韓国文学では恥や羞恥という感覚が非常に重要なテーマとなっている。韓国で暮らしていると、恥はいろいろな顔をしていて、人としての倫理に外れることを強烈に恥とする面がありながら、貧しさ、みすぼらしさなど、表面的な部分にもすごく恥を感じる人たちだなと思うことがある。外見やTPOにうるさく、自分がよければどんな格好をしていても、それでよしとする意識は日本以上に少ない気がする。 この短編集でもいろいろな場面で人々は羞恥心を感じ、怒ったり、自嘲したりする。それとはわからないようなところで、突きつけられる自己矛盾に恥ずかしくなったりもする。 唯一それをしない主人公は、表題作の誰にでも親切な教会のお兄さん、カン・ミノだ。彼はそれを忘れてしまう。自分のふるまいを、自分がやってきた、もし覚えていたら恥ずかしくなってしまうようなふるまいを思い出せない。聖者に1番近そうな親切な教会のお兄さんだが、こういう人はやっかいだ。人を傷つけ続ける。そしてわたしの中にもたぶんカン・ミノがいる。 著者のイ・ギホさんは全く反対の人のような気がする。自分の恥ずかしさを忘れられないどころか、書き留めてしまう。長く生きているとネタにするしかないと苦笑いするようなことがいくつかあるけれど、それをきっちり「作品」にして、さらにバツが悪くなっているような作家はあまりいないんじゃないだろうか。 私はそんな作家の書いたこの本が好きだし、他の作品も読んでみたいと思う。【お店より】
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【新刊】韓国・フェミニズム・日本 斎藤真理子責任編集 河出書房新社
¥1,760
創刊以来86年ぶりに3刷となった「文藝」2019年秋季号特集「韓国・フェミニズム・日本」が、大増補のうえ遂に単行本化! 日韓の書き手が描き出す韓国文学とフェミニズムのいま。 創刊以来86年ぶりの3刷となった 「文藝」2019年秋季号の特集「韓国・フェミニズム・日本」、内容を新たにした完全版! ベストセラー小説『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者チョ・ナムジュによる傑作短編「家出」、シンガー・ソングライターのイ・ランによる初邦訳作「手違いゾンビ」、新世代のフェミニスト作家ユン・イヒョンの代表作「クンの旅」、性暴力をめぐり社会の現実を克明に暴くパク・ミンジョン「モルグ・ジオラマ」など、韓国文学の最前線をいち早く紹介! さらに、いま韓国で最も注目を集め、文学の未来を担う作家ファン・ジョンウンとチェ・ウニョンのふたりによる、本書のための書き下ろしエッセイを収録。 他にも大注目の書き手たちによる書き下ろしと特別企画を加え、「文藝」の特集からさらにパワーアップし、『完全版 韓国・フェミニズム・日本』としてここに誕生!【出版社の内容紹介より】 単行本 A5 ● 192ページ ISBN:978-4-309-02837-8 ● Cコード:0095 発売日:2019.12.02 「文藝」秋季号がおもしろいと聞いて本屋さんをまわったが品切れ、あとで本になると聞いて楽しみにしていた本。書き下ろし、対談、エッセイあり、ブックガイドあり、韓国についてのキーワードも韓国文学マップも入っていて、初めて韓国文学に触れる人にも親切。そばに置いて何度も手に取りたくなる。【お店より】
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【新刊】少年が来る ハン・ガン著 井手俊作訳 CUON
¥2,750
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『菜食主義者』でマン・ブッカー国際賞に輝いた、ハン・ガン渾身の物語 あの光州で起きた民主化運動の鎮魂曲 光州事件から約三十五年。あのとき、生を閉じた者の身に何が起きたのか。 生き残った者は、あれからどうやって生きてきたのか。 未来を奪われた者は何を思い、子どもを失った母親はどんな生を余儀なくされたのか。 三十年以上の月日を経て、初めて見えてくるものがあるーー。 丹念な取材のもと、死者と生き残った者の声にならない声を丁寧に掬いとった衝撃作。【出版社内容紹介より】 ここ数年読んだ本の中で1番かもしれない。それほど自分の中に何かが残った本だった。 光州事件で民主化運動を「よきもの」として行動した人たちが命を落とし、肉体が朽ちていく中、残った魂はどうなったのか、そして残されたものたちは、傷ついたからだとこころを抱えながらどう生きたのかが克明に記されていて、読んでいて胸に迫ってくる。 この本を知ったきっかけは斎藤真理子さんの「現代韓国文学入門」。そこで、斎藤さんはこの小説の読後感を「経験したことのないスポーツをやっているような経験」と表現しており、また、著者のハン・ガンさんが、イギリスの文学賞、ブッカー賞受賞作の「菜食主義者」よりもこれを読んでほしいと、これだけは多くの人に読んでもらいたいと話していたとの紹介があった。 本を読んだ後、私も、かたちのない、けれど重みのあるずしんとした何かを受け取ったような気がして、ただそれがなんなのか、なかなか言葉にできないでいる。 1980年5月18日~27日、民主化を求める学生たちのデモを戒厳軍が過剰に鎮圧し、多くの死者を出した光州事件。その光州事件でなにが起きたのか、いのちを失った後の肉体と魂はどうなるのかが、とても繊細に、生々しく描かれている。 光州事件は最近でも「光州5.18」「タクシー運転手」など、映画になっていたり、KPOP人気グループBTSの歌の中にも取り上げられていたり、痛みを伴いながら、ずっと語り継がれている。 民主化運動の象徴とされる光州事件。韓国で、たびたび繰り返されるのが、「こんな世の中にするために光州の人たちは死んだのか」という文言であるらしく、「光州は1つの装置。どう扱うかが常に問われ、監視される」と斎藤さんは言う。 日本で置き換えるとするなら、光州事件は何になるのだろうか。私たちはその痛みを今も記憶しているだろうか。その痛みを繰り返すまいと、今の日本をしっかり監視できているだろうか。ふとそんなことを思った。【お店より】
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【新刊】娘について キム・ヘジン著 古川綾子訳 亜紀書房
¥2,090
私の育て方が悪かったんですよね 「普通」の幸せに背を向ける娘にいらだつ「私」。 ありのままの自分を認めてと訴える「娘」と、その「彼女」。 ひりひりするような三人の共同生活に、やがて、いくつかの事件が起こる。 【出版社の内容紹介より】 著者 キム・ヘジン 著 古川 綾子 訳 価格 1,900円(税別) 発売日 2018年12月19日 判型 四六判 製本 並製 頁数 232頁 ISBN 978-4-7505-1568-7 Cコード C0097 娘を愛しつつも受容できない葛藤。 きっと私の母も感じたであろう葛藤を、そのまま見せてくれた作品。【お店より】
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【新刊】アーモンド ソン・ウォンビョン著 矢島暁子訳 祥伝社
¥1,760
https://www.shodensha.co.jp/almond/ 韓国で30万部突破!「書店員が選ぶ今年の本」(2017)に選ばれた感動のベストセラー小説、ついに上陸! “感情”がわからない少年・ユンジェ。 ばあちゃんは、僕を「かわいい怪物」と呼んだーー 扁桃体(アーモンド)が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない十六歳のユンジェは、 目の前で家族が通り魔に襲われたときも、無表情で見つめているだけだった。 そんな彼の前に、もう一人の“怪物”が現れて……。【出版社の内容紹介より】 ■出版社: 祥伝社 ■著者名: 矢島暁子/ソン・ウォンピョン ■ISBNコード: 9784396635688 ■判型/頁 : 四六判ハード /272頁 ■定価: 本体: 1,600円+税 ■発売日: 2019/07/10 「ばあちゃん、どうしてみんな僕のこと変だって言うの?」 「人っていうのは、自分と違う人間が許せないもんなんだよ」 扁桃体(アーモンド)が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない十六歳の高校生、ユンジェ。 そんな彼は、十五歳の誕生日に、目の前で祖母と母が通り魔に襲われたときも、ただ黙ってその 光景を見つめているだけだった。 母は、感情がわからない息子に「喜」「怒」「哀」「楽」「愛」「悪」「欲」を丸暗記させることで、 なんとか“普通の子”に見えるようにと訓練してきた。だが、母は事件によって植物状態になり、 ユンジェは、ひとりぼっちになってしまう。 そんなとき現れたのが、もう一人の“怪物”、ゴニだった。 激しい感情を持つその少年との出会いは、ユンジェの人生を大きく変えていくーー。 怪物と呼ばれた少年が愛によって変わるまで。 【2020年本屋大賞翻訳小説部門第一位受賞作になりました!】 扁桃体(アーモンド)が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない16歳の高校生ユンジェ。ばあちゃんに「かわいい怪物」と呼ばれていたユンジェの前に、もう一人の怪物が現れる。怒りや恐怖心を体いっぱいに宿した怪物が。 人が感情的になるときというのは、いったいどんな時なのだろう。 人と違うという、ただそれだけで、人は恐怖におびえたり、怒ったりするだろうか。 人と違うということだけでは何かが傷つき、損なわれることはないはず。 では、どんな時に人は怒りと恐怖を感じ、感情的になるのだろう。 痛み、劣等感、寂しさ、蔑み、悪口…。それを受けた時、もしも感情がなかったら、その情景はどのように見えるのだろう。 怒りや恐怖を超えて、その人を理解することはできるのか。愛することはできるのか。 そんなことを思いながら、一気に読んだ本でした。【お店より】
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【新刊】目の眩んだ者たちの国家 キム・エラン , パク・ミンギュ , ファン・ジョンウン , キム・ヨンス他 著 矢島 暁子 訳 新泉社
¥2,090
「どれほど簡単なことなのか。希望がないと言うことは。この世界に対する信頼をなくしてしまったと言うことは。」 ――ファン・ジョンウン 国家とは、人間とは、人間の言葉とは何か――。 韓国を代表する気鋭の小説家、詩人、思想家たちが、 セウォル号の惨事で露わになった「社会の傾き」を前に、 内省的に思索を重ね、静かに言葉を紡ぎ出す。 「私たちは、生まれながらに傾いていなければならなかった国民だ。 傾いた船で生涯を過ごしてきた人間にとって、この傾きは安定したものだった。」 ――パク・ミンギュ 「みんな本当は知っているのに知らないふりをしていたり、知りたくなくて頑なに知らずにきたことが、セウォルという出来事によって、ぽっかりと口を開けて露わになってしまったのだ」 ――ファン・ジョンウン 「私たちが思う存分憐れみを感じられるのは、苦痛を受ける人たちの状況に私たち自身が何の責任もないと思うときだけだ。」 ――チン・ウニョン 「「理解」とは、他人の中に入っていってその人の内面に触れ、魂を覗き見ることではなく、その人の外側に立つしかできないことを謙虚に認め、その違いを肌で感じていく過程だったのかもしれない。」 ――キム・エラン 「人間の歴史もまた、時間が流れるというだけの理由では進歩しない。 放っておくと人間は悪くなっていき、歴史はより悪く過去を繰り返す。」 ――キム・ヨンス ◎中島京子氏評「2018年の「この3冊」」(「毎日新聞」2018年12月16日) 《傾いた船に乗って沈もうとしているのは私たちだと感じている昨今、その苦しみを噛みしめながら書かれた言葉に打たれる。》 ◎「セウォル号以後文学」の原点 2014年4月16日に起きたセウォル号事件。修学旅行の高校生をはじめ、助けられたはずの多くの命が置き去りにされ、失われていく光景は韓国社会に強烈な衝撃を与えました。 私たちの社会は何を間違えてこのような事態を引き起こしたのか。本書は、セウォル号事件で露わになった「社会の傾き」を前に、現代韓国を代表する小説家、詩人、思想家ら12人が思索を重ね、言葉を紡ぎ出した思想・評論エッセイ集です。 本書に寄稿している作家たちの文学作品は、近年、日本でも広く翻訳出版され、多くの読者を獲得するようになりました。それら新世代の作家が深く沈潜した場所から発した研ぎ澄まされた言葉の数々は、揺るぎない普遍性を獲得し、「震災後」の世界を生きる日本の私たちの心の奥深くに届くものであると確信しています。 《本書に収録された文章は、季刊「文学トンネ」2014年夏号と秋号に掲載された後、同年10月に単行本化されて韓国で増刷を重ね、多くの人に読まれてきました。キム・エラン作『外は夏』に代表される韓国の「セウォル号以後文学」の原点といえる本書を通して、韓国の作家たちが喪失と悲しみにどう向き合ったのかを知っていただければと願っています。》 【出版社の内容紹介より】 四六判上製256頁 1900円+税 ISBN 978-4-7877-1809-9 2018.05.25発行 12人の小説家や学者たちが2014年に書いた文をまとめた本。『セウォル号は船が沈没した「事故」であり国家が国民を救助しなかった「事件」なのだ。』2017年に韓国では大統領の弾劾が成立し、マスコミも全て刷新された。一体どうすればーそう問うていた3年後には、韓国の人々は答えを出していた。 2014年4月16日に起きたセウォル号沈没事故。 わたしが最初に知ったのはたぶん日本のニュースかワイドショーだったと思う。ワイドショーで、どうして船が沈んだのか、積載量はどうだったのか、船の構造は…などという話を延々していたような記憶がある。 次に聞いたのは数年後、2014年4月から始まった私の好きなラジオのパーソナリティーの番組をさかのぼって聴いていた時。4月14日の回からしばらくの間、ラジオのパーソナリティーの沈痛な声と悲しく静かな音楽が流れる放送を聴いた。もともとは明るく楽しい雰囲気もあるラジオ番組だったけれど、その間の放送は全く違ったものになっていた。 その次は「共犯者たち」という映画の中で。 そして、昨日、この本で再びセウォル号に出会った。細かく言えば、「外は夏」というキムエランの短編集で、BTSの「spring day」という歌の中にもセウォル号はあった。 ファンジョンウンという作家の書いたものが読みたいと探していて、偶然手にした本だった。前に知り合いからタイトルを聞いて知ってはいたものの、そのままになっていた本でもあった。 すぐに読み始めて、感想をUPしようとしたけれど、できなかった。最後まで読み込めず、言葉が出てこなかった。1日経った今なら書けるのか、心もとないけれど、思ったことを書いてみようと思う。 収録された12篇の文章はどれもセウォル号沈没事故が起きた2014年の夏と秋に季刊誌に掲載されたもので、12人の小説家や詩人、文芸評論家、社会学者、言論学者、精神分析学者、現代政治哲学研究者が書いている。学者が書いたものは、私にはちょっと読みづらく、咀嚼できずに終わった感がある。 一番心に残ったのは、小説家パクミンギュが自分の章「目の眩んだ者たちの国家」の中で言う、 セウォル号は 船が沈没した「事故」であり 国家が国民を救助しなかった「事件」なのだ。 もうこの2枚のフィルムは切り離さなければならない。 という文だった。 そう、セウォル号は単なる沈没事故ではなく、沈没しかけている船をみんな見ていながら、船長も船員も、海洋警察も、政府もマスコミもみな誰一人船に残された300人以上の高校生たちを助けようとしなかった事件でもあるのだ。 この本の中で多くの人が、セウォル号沈没事故が起きた時、自分は何をしていたか、周りの人はどうだったかを書いていた。みんな、最初は全員救助の誤報を信じ、大したことないと思っていた。それが、もうセウォル号以後の世界は存在しないとまで言わせる事件に変わっていく。 そして、この文章が書かれた当時は、批判的な文章を書くのも大変な時期だったのかもしれない。ではこの事件をどうすればいいのか。なにをすればいいのか。誰が何を答えればいいのか。そんな問いが12篇のどれからも浮かんできていた。 「しかし、みんな一緒に滅びてしまったのだから質問しても無駄だ。と私が考えてしまったその世の中に向かって、遺族たちは、持てる力を振り絞って質問をしていたのだ。」「ならば今度は私は何をすべきなのか。彼らの質問に応答しなければならないのではないか。」ーファン・ジョンウン 「これは最後のチャンスだ。どんなに困難でも辛くても、私たちは目を開けなければならない。」「私たちが目を開けなければ 最後まで目を閉じることのできない子どもたちがいるのだから」ーパク・ミンギュ 「そして、この質問に対して小説家はどんな使い道があるのか考えてみる。誰でも考えられそうな話を長く引きのばして書くこと以外に、どんな効用を期待することができるのだろうか。それでもどこかに答えがあるだろう。少なくともこの仕事は、プラスペンが一本、目の前を通り過ぎるとき、手を伸ばしてそれを掴もうとする力ぐらいは与えることができるのではないかと、期待してみる。」-ペ・ミョンフン この日本語訳が出たのは2018年。2017年に韓国では大統領の弾劾が成立し、それを実現した運動はキャンドル革命と呼ばれた。大統領の息のかかっていたマスコミもすべて一掃された。このあたりのことは「共犯者たち」の映画を観て知った。 いったいどうすればいいのかーそう問うていた2014年から3年後には、韓国に住む人たちは答えを出したのだと思う。それで世界がすべて変わるわけではない。今もいろんな問題は起きている。けれど、応えたのだと思った。韓国の人たちは。 キム・エランが本書の中で語っている言葉 「理解」とは、他人の中に入っていってその人の内面に触れ、魂を覗き見ることではなく、その人の外側に立つしかできないこと、完全に一体にはなれないことを謙虚に認め、その違いを肌で感じていく過程だったのかもしれない。そのうえで、少しずつ相手との距離を縮めていって、「近く」から「すぐ隣」になることなのではないか。 私がとても好きなラジオのパーソナリティーの座右の銘は「理解よりも認めること」だった。きっと彼の言う「認めること」が、キム・エランの言う「理解」なのではないかと思う。 私たちはお隣の国韓国で起きたセウォル号の事件を理解し、そしてその後で起きたできごとに、力をもらうことができるのではないか。私たちの国にもあるセウォル号事件をそのままで終わらせないために。【お店より】
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