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【新刊】誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ  イ・ギホ著 斎藤真理子訳 亜紀書房

¥1,870 税込

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必死で 情けなくて まぬけな 愛すべき「私たち」
ネット古書店でエゴサをしていたら、サイン入り自作が売りに出されていることに気づいた作家「イ・ギホ」。しかも他の作家の本より格安、酷評のコメント付きだった。
悶々として眠れぬ作家は、出品者に直接会おうとはるばるでかけるのだが……。(「チェ・ミジンはどこへ」)
夫殺害の嫌疑をかけられながら逮捕されなかった女が、十数年後、時効を3か月後に控えて自首した。一体なぜなのか。(「ずっと前に、キム・スッキは」)
「あるべき正しい姿」と「現実の自分」のはざまで揺れながら生きる「ふつうの人々」を、ユーモアと限りない愛情とともに描き出す。
  ——韓国文学の旗手による傑作短編集  【出版社の内容紹介】


著者 イ・ギホ 著
斎藤 真理子 訳
価格 1,700円(税別)
発売日 2020年1月24日
判型 四六判
製本 並製
頁数 320頁
ISBN 978-4-7505-1628-8
Cコード C0097

おもしろかった。短編集なのだけれど、どの短編集もすべておもしろかった。読みやすい文体なので、スッと中に入れて読みすすむことができる。が、読み終わった後には、なんだかうすら寒くなる。やさしいようでいて、ひどく冷静な、寄り添うようでいて、どこからも離れている、そんな感じを受ける。

最初の短編もそうだが、作家が主人公のものがたりがいくつかあり、中には同じ名前だったり、あとがきとされている短編はほぼ実話ということで、小説なのか実際にあった話なのか、その境界線がわざとぼかしてある。

訳者の斎藤さんが解説しているように、韓国文学では恥や羞恥という感覚が非常に重要なテーマとなっている。韓国で暮らしていると、恥はいろいろな顔をしていて、人としての倫理に外れることを強烈に恥とする面がありながら、貧しさ、みすぼらしさなど、表面的な部分にもすごく恥を感じる人たちだなと思うことがある。外見やTPOにうるさく、自分がよければどんな格好をしていても、それでよしとする意識は日本以上に少ない気がする。

この短編集でもいろいろな場面で人々は羞恥心を感じ、怒ったり、自嘲したりする。それとはわからないようなところで、突きつけられる自己矛盾に恥ずかしくなったりもする。

唯一それをしない主人公は、表題作の誰にでも親切な教会のお兄さん、カン・ミノだ。彼はそれを忘れてしまう。自分のふるまいを、自分がやってきた、もし覚えていたら恥ずかしくなってしまうようなふるまいを思い出せない。聖者に1番近そうな親切な教会のお兄さんだが、こういう人はやっかいだ。人を傷つけ続ける。そしてわたしの中にもたぶんカン・ミノがいる。

著者のイ・ギホさんは全く反対の人のような気がする。自分の恥ずかしさを忘れられないどころか、書き留めてしまう。長く生きているとネタにするしかないと苦笑いするようなことがいくつかあるけれど、それをきっちり「作品」にして、さらにバツが悪くなっているような作家はあまりいないんじゃないだろうか。
私はそんな作家の書いたこの本が好きだし、他の作品も読んでみたいと思う。【お店より】

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